築38年の中古住宅は、どこまで快適になる? 海の見える家の断熱リノベーション計画【第1回】
1974年10月13日生まれのO型。平和主義者のてんびん座。生粋の地元人で、八本松小学校、八本松中学校、賀茂高校、福山大学を卒業。大工として弟子入りし修行を積んだ後、6年後に独立。その後、二級建築士を取得し、設計事務所を立ち上げる。現在はホームクリエたくみで設計・施工・管理を担当し、お客様が心から喜びを感じる家づくりのお手伝いをしている。 プライベートでは三姉妹の成長を見守る父として日々奮闘中。
1974年10月13日生まれのO型。平和主義者のてんびん座。生粋の地元人で、八本松小学校、八本松中学校、賀茂高校、福山大学を卒業。大工として弟子入りし修行を積んだ後、6年後に独立。その後、二級建築士を取得し、設計事務所を立ち上げる。現在はホームクリエたくみで設計・施工・管理を担当し、お客様が心から喜びを感じる家づくりのお手伝いをしている。 プライベートでは三姉妹の成長を見守る父として日々奮闘中。
はじめに|古い家だから寒いのは仕方がない?
「中古住宅を購入して、自分たちの暮らしに合った家にリノベーションしたい」
最近、こうしたご相談が少しずつ増えてきました。
新築住宅の価格が上がっていることもあり、中古住宅を購入してリフォームするという選択肢を考える方も多くなっているように感じます。
ただ、中古住宅を購入するとなると、気になることもたくさんありますよね。
「築年数が古いけど、まだ住めるのだろうか?」
「冬の寒さや夏の暑さは改善できるの?」
「地震に対する強さは大丈夫?」
「新築と比べて、結局どちらがいいのだろう?」
こうした不安を持たれるのは当然だと思います。
私たちホームクリエたくみでは、新築住宅だけでなく、既存住宅の断熱改修や耐震補強を伴うリノベーションにも取り組んでいます。
今回から3回に分けてご紹介するのは、広島県廿日市市阿品で行った、築38年の中古住宅の大規模リノベーションです。
瀬戸内海を望む、とても魅力的な場所に建つ住宅。
しかし、建物の断熱性能や間取りには、改善したい部分がいくつもありました。
この家をどのように生まれ変わらせていったのか。
まず第1回では、お施主様との出会いから、既存住宅の状態、そしてリノベーションの計画についてお話ししたいと思います。

築38年の中古住宅を、断熱・耐震性能と暮らしやすさを考えた住まいへリノベーションしました。
海の見える中古住宅との出会い
今回のお施主様は、アメリカで5年間暮らされた後、日本に帰国されたご家族です。
ご夫婦とお子様2人、そして奥様のお母様の3世代5人で暮らすための住まいを探されていました。
そんな中で出会われたのが、廿日市市阿品に建つ築38年の中古住宅でした。
この住宅の大きな魅力は、何といっても立地です。
瀬戸内海を望むことができ、周囲の環境にも恵まれています。
家づくりを考えるとき、建物の性能や間取りはもちろん大切ですが、立地というものは後から変えることができません。
どれだけ立派な住宅を建てても、土地そのものの条件を変えることはできないからです。
そう考えると、眺望の良い中古住宅を購入して、建物を自分たちの暮らしに合わせて改修するという選択は、とても魅力的だと思います。
今回、私たちにご相談いただいたきっかけは、以前工事をさせていただいたお客様からのご紹介でした。
こうして新しいお客様とのご縁がつながることは、工務店を営む私にとって、とてもありがたいことです。
ただし、築38年の住宅をこれから長く住み続けられる家にするためには、見た目をきれいにするだけでは十分ではありません。
まずは建物の状態をしっかり確認することから始めました。

築38年の住宅が抱えていた課題
実際に建物を確認すると、築年数相応の部分もありましたが、既存の建物を活かせる可能性も十分に感じました。
一方で、現在の住宅と比較すると、いくつか大きな課題がありました。
断熱材が入っていない住宅
まず気になったのが、断熱性能です。
今回の住宅は、天井・壁・床に断熱材が入っていない、いわゆる無断熱の住宅でした。
築38年ということは、建築されたのは昭和の終わり頃です。
当時の住宅では、現在ほど断熱性能が重視されていなかったこともあり、断熱材が十分に施工されていない住宅も珍しくありません。
断熱材がないと、冬は室内で暖めた熱が外へ逃げやすく、夏は外からの熱が室内へ伝わりやすくなります。
冬に暖房をつけても、足元がなかなか暖まらない。
夏になると2階が暑く、エアコンをつけても快適になりにくい。
こうした問題は、冷暖房設備だけでなく、建物そのものの性能が関係している場合があります。
窓はアルミサッシと単板ガラス
もう一つ大きな課題だったのが窓です。
既存の窓には、アルミサッシと単板ガラスが使われていました。
住宅の中でも、窓は熱の出入りが大きい部分です。
特にアルミは熱を伝えやすい材料なので、冬場には窓の周辺が冷えやすくなります。
そのため、今回のリノベーションでは、壁や天井の断熱だけでなく、窓の性能向上も重要な計画の一つとしました。

日当たりは良いものの、濃い色の床や建具、装飾的な天井によって少し暗く感じられたLDK。独立型のキッチンも、今回見直した部分の一つです。
家族の暮らしに合った間取りへ
間取りについても、これから暮らすご家族に合わせて見直す必要がありました。
1階のキッチンはL型で、リビングとは壁で区切られた配置でした。
また、LDKの広さを確保するためには、廊下や隣接する部屋との関係を見直す必要がありました。
そこで、キッチンを対面式に変更し、廊下の一部をLDKへ取り込むことを計画しました。
家族が集まる場所だからこそ、広さだけでなく、視線のつながりや使いやすさも大切にしたいところです。
2階には、昔ながらの二間続きの和室がありました。
立派な柱や梁など、木造住宅ならではの趣が感じられる空間です。
ただ、これから成長していくお子様たちにとっては、それぞれの個室が必要になります。
そこで、この二間続きの和室を独立した子ども部屋へと変更する計画にしました。

2階にあった二間続きの和室。既存の建物を活かしながら、お子様それぞれの個室へと改修することにしました。
断熱性能を数字で確認してみると
私たちは、新築住宅でもリフォームでも、できるだけ住宅の性能を数字で確認することを大切にしています。
「暖かい家になります」
「断熱性能が良くなります」
そう説明するだけでは、実際にどれくらい性能が変わるのか分かりません。
そこで今回も、改修前の住宅について外皮性能の計算を行いました。
その結果、改修前のUA値は、
1.95 W/㎡K
でした。
UA値というのは、住宅の屋根や天井、壁、床、窓などから、どれくらい熱が逃げやすいかを表す数値です。
数値が小さいほど、熱が逃げにくい住宅ということになります。
今回の住宅は無断熱だったこともあり、熱が逃げやすい状態でした。
冬の室温もシミュレーション
さらに、改修前の住宅について、冬の室温シミュレーションも行いました。
暖房を使用しない条件で計算すると、冬の最低室温は約5℃という結果になりました。
もちろん、実際の室温は天候や日射、生活の仕方などによって変わります。
それでも、暖房を止めたときに室温が大きく下がる可能性があることは、住まいの快適性を考えるうえで重要な問題です。
断熱性能を高める目的は、単に冷暖房費を減らすことだけではありません。
家の中の温度差を小さくし、冬も夏も快適に過ごせる住まいに近づけること。
それが、私たちが断熱改修に取り組む大きな理由です。

改修前の住宅について行った冬の室温シミュレーション。暖房を使用しない条件では、最低室温が約5℃になる計算結果でした。
断熱・耐震・間取りを一緒に考える
今回のリノベーションでは、単に断熱材を入れるだけでなく、住宅全体を見直すことにしました。
大きく分けると、4つのポイントがあります。
① 断熱性能を高める
まずは、壁・床・天井・窓の断熱性能を高めることです。
今回の住宅には、既存の土壁が使われていました。
土壁は昔ながらの木造住宅に多く見られる構造ですが、断熱性能という点では、現在の高断熱住宅とは大きな違いがあります。
一方で、状態の良い土壁をすべて撤去してしまうことが、必ずしも最善とは限りません。
既存の建物を活かしながら、どのように断熱性能を高めていくか。
そこが、今回の断熱計画で考えたポイントの一つでした。
② 耐震性能を高める
断熱性能と同じくらい大切なのが、建物の安全性です。
既存住宅では、現在の耐震基準や設計方法とは異なる考え方で建てられている場合があります。
また、間取りを変更する際には、柱や壁の配置が構造に与える影響も考えなければなりません。
今回の住宅では、1階と2階の壁の位置が一致していない部分がありました。
そこで、既存の構造を確認しながら、必要な耐震補強を行う計画としました。
リノベーションでは、見た目を変えること以上に、こうした見えなくなる部分を大切にしたいと考えています。
③ 家族が暮らしやすい間取りへ
ご夫婦、お子様2人、そしてお母様。
3世代5人が暮らす住宅だからこそ、家族が集まる場所と、それぞれが自分の時間を過ごす場所の両方が必要です。
1階ではLDKを広く使えるようにし、2階では子ども部屋や書斎を計画しました。
また、洗面室や脱衣室についても、収納や自然光の取り入れ方を考えています。
④ 自然の光と風を活かす
今回の住宅は、瀬戸内海を望む恵まれた立地です。
この環境を活かさない手はありません。
庭木を整理して海への眺望を確保し、ウッドデッキを設けることも計画しました。
また、日射シミュレーションを行い、夏の日差しをどのように遮るか、冬の日射をどのように取り込むかについても検討しています。
こうした自然の力を上手に利用する考え方を、パッシブデザインといいます。
高性能な断熱材や窓を使うことはもちろん大切ですが、建物の向きや日射、風の通り道を考えることも、快適な家づくりには欠かせません。
リノベーションでは、予算とのバランスも大切
ここまで断熱や耐震、間取りの話をしてきましたが、もう一つ忘れてはいけないのが予算です。
住宅の性能を高めようとすれば、工事の範囲が広がり、それだけ費用もかかります。
特に大規模なリノベーションでは、解体して初めて分かる問題もあります。
だからこそ、最初から何でも新しくするのではなく、残せるものは残し、必要な部分にしっかり費用をかけるという考え方が重要になります。
今回も、既存の土壁や構造をどこまで活かせるか、断熱性能をどこまで高めるか、お施主様と相談しながら計画を進めました。
私は、リノベーションの良さの一つは、今ある建物の価値を見直せることだと思っています。
古いからすべて取り壊すのではなく、良い部分を残し、足りない性能を補っていく。
そうすることで、新築とはまた違った魅力のある住まいが生まれるのではないでしょうか。
次回は、いよいよ断熱・耐震工事へ
こうして始まった「阿品 海の見える家」のリノベーション。
しかし、既存住宅の工事は、新築のようにすべてを図面どおりに進められるわけではありません。
壁や床を解体して初めて分かることもあります。
次回は、実際の工事写真を使いながら、既存の土壁を活かしたセルロースファイバー断熱や、床下・天井裏の断熱工事、耐震補強についてご紹介します。
普段は壁や天井の中に隠れてしまう部分ですが、住まいの快適性や安全性を支える大切な工事です。
第2回「築38年の家を高断熱化。土壁を活かしたセルロースファイバー断熱と耐震補強」へ続きます。
阿品 海の見える家の施工事例はこちら
今回ご紹介した住宅の完成写真や、リノベーションの内容は施工事例ページでもご覧いただけます。
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「今の家の寒さや暑さを改善したい」
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ホームクリエたくみでは、住宅の状態やご予算、ご家族の暮らし方に合わせて、断熱・耐震性能を考えたリノベーションをご提案しています。
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